2020年12月19日土曜日

新潟平野における気候変動に適応した治水の方向性

安田浩保准教授
 

新潟市議会市政調査会の研修会で「新潟平野における気候変動に適応した治水の方向性」と題した講演がありました。講師は新潟大学災害・復興科学研究所の安田浩保准教授でした。安田さんからは近年の災害の傾向などを踏まえ今後の対策に必要なことなどを講演いただきました。

いくつかメモしたことを備忘録として残しておきます。

・昨年10月の千曲川氾濫の際は、新潟においても小千谷から大河津分水もいつどこで氾濫が起こってもおかしくない状況だった。
・大雨の翌日が晴れていたこともあり、土手には見物人が大勢いて危険だった。
・正常性バイアスが働いていた。
・新潟大学で河川工学を学ぼうとする学生ですら新潟市のハザードマップの認識率は低い。年度によってはクラスで知っている人がひとりもいない年もある。
・新潟市は昭和20年から平成19年までの間、約60年をかけて、海抜0m地帯に住宅街が広がってしまった。
・河川沿いは、海岸線と同じで津波の危険性もある。新潟市中央区、西区においても津波の到達が予想され、しかも水が引かないと予想される地域が広がっている。
・河川工学の専門家が減少している。リーダー候補となる博士が必要。仮説の構築とその自発的な検証、失敗を臆せずに実行できる勇気、環境に適合できる柔軟性をもった人物。
・ビックデータを活用し、水面から水底の高さを検出できる共同研究を進めている。洪水が起こった場合、川がどのように形を変えるかの予測につながる。
・阿賀野川で洪水対策と生態系回復を両立させる工法の河川改修を行った。五泉市三本木大橋から見える(←近いうちに見にいってみようと思います)

最後に新潟の治水の問題解決の鍵として、以下のことをあげていました。

20%の負担増加への低い関心と具体技術不足(温暖化による影響で河川への流入量が20%増加する)
・経済力、人口減少、担い手不足の三重問題
・いまだに自然災害への関心は高くない
・土地利用規制が必要になる
・公助から共助・自助の洪水対策への転換
・溜まりやすいから、溜めやすいへの視点の転換(田んぼダムの活用など)
・新技術の導入による被害の緩和が期待

ちなみに「阿賀野川自然再生モニタリング検討会」と検索すると安田さんが実際に関わっている事業の様子を知ることができる資料が見つかりました。

信濃川、阿賀野川は新潟の歴史・風土を語る上で欠かせないものです。様々な面から本市の暮らしと魅力の向上につながるよう引き続き勉強していきたいと思います。