『古くてあたらしい仕事』 |
就職試験に50社落ちたこと。
2008年に従兄を失ったこと。
いくつかの出来事の先に、島田さんはひとりで出版社を立ち上げました。
2009年9月、それは従兄と遊んだ夏の日々から「夏葉社」と名づけられました。
島田潤一郎『古くてあたらしい仕事』(新潮社)を読みました。出版社を営みながら感じてきたことをまとめた本です。わたしも2008年からほそぼそとひとり雑誌社を立ち上げ、ごくごくちいさな仕事を重ねてきたので、その思いに共感することも多かったです。
創業から10年、夏葉社はこれまでに35点の本を出版してきました。企画の着想は「だれも『いいね!』を押さないような小さな声を起点に、ぼくは自分の仕事をはじめたい」という思いにあるといいます。流行りやマーケティングから導き出された企画ではなく、個人的な事情や具体的に届けたい相手がいる仕事です。
協力してくれる装丁家や校閲者、取り扱い先のお店、そして読者。そのほとんどが顔の見える関係だからこそ得られる充実感、誰のための仕事なのかを見失わずにすむ、ひとり出版社という規模ならではの健全さがそこにはあると思います。わたしも同じような思いを感じながら雑誌の編集を続けてきたので。
それを島田さんはなお続け、「小さな仕事を長く続けるためのコツのようなものがあるとすれば、それは手間暇のかかった、具体的で、小さな声によりそったものだろう」と書いています。
わたしは議員という立場にさせていただきましたが、そんな初心を忘れずに活動していきたいと思いました。
おすすめの1冊です。
夏葉社:natsuhasha.com